JIIMA 認証は取るべきか ── 任意の民間認証との付き合い方
最後に、避けて通れない論点が JIIMA 認証です。「電帳法対応」とほぼ同義のように語られることもありますが、実態は異なります。この章で正しい位置づけと判断軸を整理します。
JIIMA とは
公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(Japan Image and Information Management Association)が運営する 任意の民間認証制度 です。
★ 重要:JIIMA 認証は 法令上の義務ではありません。
国税庁は「保存義務者の予見可能性確保のため」JIIMA 認証情報リストを公式サイトに掲載していますが、認証取得を要求してはいません。認証なしで電帳法対応を満たすことは完全に可能です。
認証の種類(5 種類)
| # | 名称 | 対象 |
|---|---|---|
| 1 | 電子帳簿ソフト法的要件認証 | 国税関係帳簿の電子保存ソフト(優良な電子帳簿対応) |
| 2 | 電子書類ソフト法的要件認証 | 自己が作成した国税関係書類の電子保存ソフト |
| 3 | 電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証 | 紙書類をスキャンして電子保存するソフト |
| 4 | 電子取引ソフト法的要件認証 | 電子取引データを保存するソフト(電帳法第 7 条対応) |
| 5 | デジタルシームレスソフト法的要件認証 | 令和 7 年度改正対応の新設認証 |
自社プロダクトの該当区分に応じて、必要なものだけ取得します。請求書受領 SaaS なら主に 4、経費精算 SaaS なら 3 と 4、会計 SaaS なら 1 〜 4 を網羅するイメージ。
取得するメリット
- 国税庁公式サイトの認証製品リストに掲載される:これが地味に効きます
- JIIMA 認証ロゴをプロダクトサイト・営業資料で使える
- エンタープライズ顧客の購買稟議が通りやすい
- 顧客のセキュリティチェックシートで「JIIMA 認証取得」とチェックを入れられる
取得しないリスク
- 法的には全くなし
- 営業上の説明コストが増える(認証なしでなぜ対応していると言えるのかを毎回説明する必要)
- エンタープライズで JIIMA 認証必須のチェック項目を持つ企業からは候補に挙がりにくい
主要 SaaS の取得状況(2026 年時点)
| プロダクト | 認証 |
|---|---|
| freee 会計 | 電帳法スキャナ保存 / 電子取引ソフト |
| マネーフォワード クラウド Box | 電帳法スキャナ保存 / 電子取引ソフト |
| 楽楽精算 | 電帳法スキャナ保存 |
| invox 電子帳簿保存 | 電子取引ソフト |
| Bill One | 電子取引ソフト |
電帳法をプロダクトの中核に据えている SaaS は、ほぼ全社が取得済みです。電帳法が プロダクトの売り ではない場合(例: 一般的な業務 SaaS で、おまけで領収書添付ができる、みたいな機能)は、認証なしでレベル 1 〜 2 のどこかで止めるのも合理的判断です。
取得するかしないかの判定フロー
ここまでの議論を判定フローに落とすと次のとおりです。
flowchart TD
Start([JIIMA認証を取得すべきか?])
Start --> Q1{電帳法対応が<br>プロダクトの主要価値?}
Q1 -->|Yes| TAKE[取得を強く推奨<br>競合と並ぶための前提]
Q1 -->|No| Q2{ターゲット顧客に<br>エンタープライズが含まれる?}
Q2 -->|Yes| Q3{セキュリティチェックシートで<br>JIIMA認証を要求されるか?}
Q2 -->|No| SKIP1[取得不要<br>機能要件で説明]
Q3 -->|頻繁| TAKE
Q3 -->|たまに| Q4{取得コストと<br>営業上の効果の<br>バランスは?}
Q4 -->|効果大| TAKE
Q4 -->|効果小| SKIP2[取得不要<br>個別対応で説明]
style TAKE fill:#e8f5e8
style SKIP1 fill:#fff3cd
style SKIP2 fill:#fff3cd
「取得が法的義務ではない」という事実をベースに、営業面の効果が取得・維持コストを上回るかどうか で判断するのが筋の良い意思決定軸です。
まとめ
- JIIMA 認証は法令上の義務ではなく、任意の民間認証
- 取得すれば営業面で大きなメリット、しないことに法的リスクはなし
- 電帳法を主要価値に据えるプロダクト / エンタープライズ顧客の比重が大きいプロダクトは取得を推奨
- 一般業務 SaaS のおまけ機能なら、Lv.1 〜 2 で止める判断も合理的
次章で本シリーズを締めくくります。