目次を表示する

電帳法対応、プロダクトとして「何ができていれば対応済み」と言えるのか

電子帳簿保存法とは何か ── 法律の正体と改正史

電子帳簿保存法とは何か ── 法律の正体と改正史

この章では、電帳法そのものの全体像を 5 分で押さえます。「特例」を定めた法律であるという基本構造、改正史のマイルストーン、宥恕措置と猶予措置の違いまでカバーします。

法律の正体

電子帳簿保存法(以下、電帳法)の正式名称は

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成 10 年法律第 25 号)

長いので分解すると、

  • 電子計算機を使用して作成する = 紙ではなく PC で作る
  • 国税関係帳簿書類 = 法人税・所得税・消費税などに関わる帳簿(仕訳帳・総勘定元帳)と書類(請求書・領収書・契約書 等)
  • 保存方法等の特例 = 「本来は紙で保存しろ」がベースで、それを電子保存に置き換えてもよい、という 特例 を定めた法律

ここが大事なポイントで、電帳法は「電子化を強制する法律」ではなく、「紙保存が原則、電子保存は特例」という設計の法律です。1998 年(平成 10 年)に制定されたときからこの構造は変わっていません。

所管は 国税庁。違反の認定や運用判断も国税庁および税務署が行います。

改正の歴史(最低限これだけ)

電帳法は何度も改正されており、ネット上に古い情報が大量に残っています。プロダクトとして対応する上で押さえておくべきマイルストーンは次の 4 つだけです。

時期改正プロダクト視点で何が変わったか
2022 年 1 月施行令和 3 年度税制改正事前承認制廃止/タイムスタンプ要件緩和/検索要件の項目を 3 つに限定/電子取引データの紙出力保存措置を廃止(→ 電子データの電子保存が法的義務化)/重加算税 10% 加重制度が新設
2022〜2023 年令和 4 年度税制改正宥恕措置を新設。令和 4 年 1 月〜令和 5 年 12 月 31 日まで、やむを得ない事情があれば紙出力保存も事実上認められる経過措置
2024 年 1 月施行令和 5 年度税制改正宥恕措置の終了/代わりに「相当の理由」がある場合の 猶予措置 を新設(電子データ保存自体は必須)/検索要件全部不要となる売上高基準を 1,000 万円以下から 5,000 万円以下 に拡大
2027 年 1 月施行(予定)令和 7 年度税制改正デジタルシームレス制度 の新設。基準適合システムで保存した記録は重加算税 10% 加重の対象外、青色申告特別控除 65 万円の要件緩和

時系列で図にすると次のとおりです。

timeline
    title 電子帳簿保存法 改正の歴史
    1998 : 制定(平成10年法律第25号)<br>紙保存原則 + 電子保存特例
    2022 : 令和3年度改正<br>事前承認制廃止<br>紙出力保存措置を廃止<br>重加算税10%加重を新設
    2022-2023 : 令和4年度改正<br>宥恕措置で<br>紙出力保存も事実上OK
    2024 : 令和5年度改正<br>宥恕措置が終了<br>代わりに「猶予措置」へ<br>売上基準1,000万→5,000万円
    2027 : 令和7年度改正(予定)<br>デジタルシームレス制度<br>重加算税10%加重対象外へ
  • 2022 年 1 月:法律上は電子取引データの電子保存が義務化(紙出力保存措置の廃止)
  • 2022 年 1 月〜2023 年 12 月:宥恕措置により、やむを得ない事情があれば紙出力保存も事実上 OK
  • 2024 年 1 月以降:宥恕措置が終了。代わりに「相当の理由」がある場合の 猶予措置 に切り替わる(後の章で詳述)

ここで重要なのは、宥恕措置と猶予措置はまったく別物 という点です。宥恕措置は「紙出力で済ませてよい」期間でしたが、猶予措置では 電子データ自体の保存は必須。「紙印刷だけして電子データは捨てる」運用は 2024 年以降は認められません。プロダクト側としては、ここを混同している顧客への啓蒙も役割の一つになります。

この法律のスコープを誤解しない

電帳法は、

  • 誰の何を対象にするか = 法人税・所得税の納税義務者が、国税関係帳簿・書類および電子取引データを保存するとき
  • 何を要求するか = 一定の要件を満たした上で電子保存することを認める/一部は義務化する

という法律です。会計処理そのものや帳簿の付け方を定める法律ではありません。仕訳のルールは法人税法・所得税法・会社法・会計基準が定めています。電帳法は 「保存」の部分だけ を扱う、と理解しておくと混乱しません。

まとめ

  • 電帳法は「保存方法の特例」を定めた法律。紙保存が原則、電子保存は特例という設計
  • 1998 年制定。プロダクト視点で押さえるべき改正マイルストーンは 2022 / 2024 / 2027 年
  • 「2024 年 1 月から実質的に完全義務化」はもう少し正確には「2022 年 1 月に法的義務化、宥恕措置が 2023 年末で終了して 2024 年から完全に効力を発揮」
  • 宥恕措置と猶予措置の違い(紙保存 OK か、電子保存必須か)は顧客教育の重要ポイント

次章では、電帳法を理解する上で最大の壁となる 3 つの区分 を見ていきます。