AI エージェントを業務に組む ─ アーキテクチャパターンの地図

自律的に動く / 常時稼働する AI エージェントを業務遂行に投入するための「形(アーキテクチャパターン)」を、8 つの基本パターン × 6 トポロジー × HITL 設計 × アンチパターンで地図化する。三部作の第2部。

AI エージェントを業務に組む ─ アーキテクチャパターンの地図

第1部6 レイヤの技術スタックを渡した。部品の地図は揃った。だが部品を集めただけではエージェントは動かない。

業務に投入できるエージェントを組むには、部品を どう並べるか ── つまりアーキテクチャパターンの設計が要る。これを間違うと、デモは派手に動くのに業務に乗らない、という現象が再発する。

「LangGraph で組んだ 5 エージェントが永遠に話し合い続けて結論が出ない」「Pipeline の 3 段目で失敗して、全部やり直しになる」「Orchestrator が SPOF になり、サブが空回りする」「ユーザーが承認疲れで全部 yes を押すようになり、HITL が形骸化する」。これらはすべて、パターン選択の失敗から起きる。

このシリーズは、業務投入できるエージェントを組むための パターンとトポロジーの地図 を提供する。

対象読者

  • 第1部「AI エージェントを業務に乗せる ─ 技術スタックの地図」を読み終えた人
  • LangGraph / OpenAI Agents SDK / Microsoft Agent Framework / CrewAI などのフレームワークを 触ったことがあるソフトウェアエンジニア
  • 単一エージェントは動かしたが、マルチエージェントに切り替えるべきか迷っているテックリード
  • HITL(Human-in-the-Loop)の差し込み方を 設計の選択肢として整理したい人

前提知識:第1部で扱った 6 レイヤモデル(推論・計画 / ツール接続 / メモリ / 実行環境 / オーケストレーション / 常時稼働 / 観測)。第1部を読んでいない場合、本作の表現が分かりにくい場合がある。

項目
難易度★★★★☆
読了時間約 2.5 時間
対象バージョンLangGraph 1.0 / OpenAI Agents SDK 2026-04 / Microsoft Agent Framework v1.0 / CrewAI 47.8K stars 時点 / A2A v1.0.0
シリーズ構成8 章

読み終わったときに何ができるようになるか

このシリーズを読み終えると、次の 4 つができるようになる。

  1. 8 つの基本パターン(Augmented LLM / Prompt Chaining / Routing / Parallelization / Orchestrator-Workers / Evaluator-Optimizer / Autonomous Agent / Harness+Sandbox)の使い分けが判断できる
  2. 6 つのトポロジー(Single / Supervisor-Worker / Swarm / Router / Hierarchical / Pipeline)の中から、自分のユースケースに最適なものを選べる
  3. HITL を 6 箇所 × 6 実装パターンで体系的に設計できる。承認疲れ・rubber-stamp・SPOF を回避する設計判断ができる
  4. Devin / Manus / ChatGPT Agent / Replit / Claude Code / Cursor がそれぞれ何を採用し、何を諦めたかをパターン語彙で読み解ける

逆に、このシリーズでやらないこと:

  • 個別フレームワーク(LangGraph / CrewAI など)の SDK チュートリアル
  • プロンプトエンジニアリングのテクニック集
  • Workflow エンジンの実装解説(Temporal の内部、など)

三部作のうちの第2部

第1部 [完結] 技術スタック編   ──「何があるか」を地図化する
第2部 [本作] アーキテクチャパターン編 ──「どう組み合わせるか」を設計する

第3部 [予定] 運用工学編       ──「壊れずに動き続けさせる」を実装する

第1部で渡した 6 レイヤは「部品」だった。本作では、その部品を どう並べるか を扱う。並べ方には選択肢があり、選択肢には trade-off がある。本作はその trade-off を明示する。

既存シリーズとの伏線

本作は次の既存シリーズと接続している:

読み方

  • A. 通読:ch1 → ch8 を順に。パターンの全体像を構築する
  • B. 関心領域からつまみ食い:パターンカタログ → ch2 / トポロジー比較 → ch3 / 古典パターン → ch4 / HITL → ch5 / 失敗回避 → ch6 / 本番事例 → ch7
  • C. リファレンス:ch7 のパターン × 製品マトリクスを起点に逆引き

シリーズ構成

テーマ
1プロローグ ─ Demo は走るのに、パターンが崩れると業務に乗らない
28 つの基本パターン ─ Anthropic 5+1 + Harness+Sandbox
3マルチエージェント・トポロジー 6 種と A2A プロトコル
4古典パターン ─ ReAct・Reflexion・Plan-and-Act・Voyager
5HITL 設計の体系 ─ 6 箇所 × 6 実装 + 4 リスク
6アンチパターン集 ─ Premature multi-agent から Router の分類精度天井まで
7本番事例の解剖 ─ パターン語彙で読み解く 7 製品
8エピローグと第3部への伏線 ─ 運用工学編へ

このシリーズの立ち位置

世の中には「マルチエージェント」「Orchestrator」「Swarm」「ReAct」など、エージェントパターンの言葉が氾濫している。だが、それぞれが何を解決し、何と組み合わせ、何と競合し、何で失敗するかを体系的に整理した日本語のリファレンスは少ない。

このシリーズは、フレームワーク非依存にパターンの分類学を提供する。Anthropic / LangChain / Microsoft / OpenAI / CrewAI が提唱するパターンを横断比較し、実用上意味のある 8 パターンに絞る。さらに、それらを並べる 6 トポロジーと、HITL の 設計マトリクスを整理する。

読み終わった時、自分のチームが組むべきエージェントのが見えるようになっていることが目標だ。

それでは、まず「Demo は走るのに、パターンが崩れると業務に乗らない」のはなぜかを、第1部の続きから解き明かそう。

目次

  1. プロローグ ─ Demo は走るのに、パターンが崩れると業務に乗らない 第1部「技術スタックの地図」を前提に、第2部の問題提起をする。部品があってもパターンが間違うと業務に乗らない。Cognition と Anthropic の論争を入口に、本作の構成を提示する。
  2. 8 つの基本パターン ─ Anthropic 5+1 + Harness+Sandbox Anthropic「Building Effective Agents」の 5+1 を起点に、Autonomous Agent Loop と Harness+Sandbox を加えた 8 つの基本パターンを「いつ使うべきか / 使ってはいけないか」のセットで定義する。
  3. マルチエージェント・トポロジー 6 種と A2A プロトコル マルチエージェントの「形」を 6 種類のトポロジーで整理し、それぞれが「常時稼働で何が壊れるか」を実例で示す。エージェント間通信の標準である A2A プロトコルの 2026 動向も統合する。
  4. 古典パターン ─ ReAct・Reflexion・Plan-and-Act・Voyager 現代のエージェント設計のルーツとなる 5 つの古典パターン(ReAct / Reflexion / Plan-and-Act / Tree of Thoughts / Voyager)を、本作の 8 パターン語彙にマッピングして整理する。
  5. HITL 設計の体系 ─ 6 箇所 × 6 実装 + 4 リスク 自律と監視のスペクトルを業務シナリオに合わせて設計するためのマトリクスを提示する。差し込み 6 箇所、実装 6 パターン、4 リスクを 2026 の本番事例で整理する。
  6. アンチパターン集 ─ Premature multi-agent から Router の分類精度天井まで 業務投入で頻出する 8 つのアンチパターンを「症状 / 根本原因 / 脱出法」の形式で整理する。Premature multi-agent、HITL 過多/放棄、Pipeline SPOF、Swarm 合意ループ、Router 分類精度天井、Lead 飽和、メモリ汚染、Reflection 暴走。
  7. 本番事例の解剖 ─ パターン語彙で読み解く 7 製品 第2部の語彙(8 パターン × 6 トポロジー × 古典 × HITL)を 7 つの本番エージェント(Devin / Manus / ChatGPT Agent / Replit / Claude Code / Copilot Workspace / Cursor)に当てはめて解剖する。
  8. エピローグと第3部への伏線 ─ 運用工学編へ 第2部の地図を統合し、第3部(運用工学編)への伏線を回収する。本作の語彙チェックリスト、参考文献、姉妹シリーズとの接続を整理する。